特定技能と技能実習生の違いは?注意点は?

2021年08月12日

2019年に創設された、新しい資格「特定技能」。

この特定技能が、外国人労働者受け入れの新たな受け皿として注目されています。

この特定技能について、同じ在留資格の中でもよく比較される「技能実習」との違いと注意点を見ていきましょう。

 

特定技能とは

 まず、特定技能とは何かを見ていきましょう。

特定技能とは、2019年4月に創設された在留資格です。

目的は主に、中~小規模事業者にむけた人材不足の解消です。

なので、特定技能の適用範囲は人材不足が深刻な業種に限定されています。

2021年現在では、対応している業種は以下の14種です。

介護業、外食業、建設業、造船・舶用工業、自動車整備業、航空業、宿泊業、ビルクリーニング業、農業、漁業、飲食料品製造業、素形材産業、産業機械製造業、電気・電子情報関連産業

上記の業種において、日本国内で就職がしたい外国人向けに、「特定技能」の資格が与えられます。

特定技能には1号と2号があり、日本国内で就職がしたい外国人は、まず特定技能資格1号を取得することになります。

特定技能1号資格を取るには、技能水準を測る技能試験と、日本語能力水準を測る日本語試験に合格する必要があります。

また、技能実習と、その習熟を目的とした資格「技能実習2号」を良好に終了する必要があります。

待遇については、特定技能1号の在留期間は最大5年、家族の帯同は基本的には認められず、各種関係機関からの支援の対象になります。

 

技能実習生とは

 技能実習生とは、技能実習の資格を持った外国人研修生のことです。

本来の目的は、外国人に、母国では習得困難な技術を習得してもらうために、日本の企業で受け入れて技術を習得してもらうというものです。

ただ、この技能実習の下で研修を行う際、実際に働きながら技能を学ぶOJT方式を取れば、労働力としても使えてしまうという抜け穴がありました。

技能実習資格の創設当初は、制度に様々な穴があり、研修の範囲内であれば、労働基準法は関係無いと解釈する企業も多く、過労働や劣悪な労働環境が問題になりました。

現在では改正が重ねられ、そのようなことは少なくなりましたがそれでも企業によっては実質的な労働力として計算される場合があります。

そのため、特定技能と技能実習は比較されがちとなっています。

 

特定技能と技能実習の違いと注意点「関係性」

特定技能と技能実習の違いについて、ここまで記事を読まれた方は分かったかもしれませんが、その目的が違います

技能実習は外国人向けの技術実習制度なのに対し、特定技能は日本国内の人材不足の解消が目的です。

また、技能実習は、特定技能の前段階という関係性もあります。

技能実習か特定技能かではなく、技能実習後に特定技能に変更することで、外国人実習生及び労働者の長期間確保が可能になっています。

まず、入り口の技能実習1号の滞在期間が1年です。

そして、技術を更に習熟させるための技能実習2号の滞在期間は3年です。

そして、さらに高度な技術を学ぶための技能実習3号の滞在期間は5年です。

技能実習2号と技能実習3号からは、特定技能1号への移行が行えます。

特定技能1号の在留期間は最大5年です。

つまり合計で14年の在留期間を得られることになります。

14年間といえば、技術が習熟し、ベテランである期間も、かなり長くなるでしょう。

人手が足りない業種にとって、14年の長期間において実質的に雇用できるというのは大きいですね。

ここで注意しておきたい点は、特定技能と技能実習では適用される業種が違うということです。

特定試験にあって、技能実習に無い、またはその逆のパターンがあるので、自社の業種が両方に対応しているかどうかは、必ず確認しておきましょう。

また、建設業と造船・船舶工業業については特定技能2号の適応が可能となります。

特定技能2号資格の在留期間は無期限なので、他業種と事情が変わってきます。

その辺りにも注意したいですね。

 

特定技能と技能実習の違いと注意点「転職」 

制度のシステム的な面では転職の可否が大きな違いでしょう。

特定技能資格所持者は明確に労働者なので、転職は自由に認められています。

対して技能実習生は研修生なので、そもそも労働はしていないということになります

とはいえ、雇用された会社内の実習の中で技能を学んでいくのが技能実習生です。

実質的には会社に就職して働くのと、それほど変わりはありませんので、以後、敢えて「転職」という表現で書かせていただきます。

特定技能資格所持者は自由に転職が可能なのに対し、技能実習生は研修生という立場上、原則、転職ができません。

転職できるのは受け入れ先の企業に不正があった場合等、限定的なケースに限ります。

ただし、2020年4月からは、新型コロナウイルスの影響により、ある程度自由な転職が可能となりました。

主に、受け入れ企業の経営状況悪化により技能実習生の雇用が困難になった場合、別の業種への転職が可能となったのです。

とはいえ、常識的な範囲での雇用であれば、技能実習生の転職は出来ません。

これは雇う側からしてみると、優秀な人材を自社に留めておきやすいメリットですね。

注意点としては、特定技能資格所持者になると、転職の自由度は増えるという点です。

特定技能資格所持者になった段階で、より待遇の良い別企業に転職するという場合も考えられます。

長年、同じ企業に勤務していると、雇用した側もされた側も愛着が沸くものですが、半面、不平、不満も蓄積されやすいです。

特定技能資格所持者になる時のことも念頭に置いて、技能実習生の段階でも良質な関係を作っていくことが大事でしょう。

 

まとめ

まだ新しく創設されたばかりの特定技能と、劣悪な労働環境の話題が多く、あまり良いニュースを聞かない技能実習。

ですが、この二つの制度をうまく使うことによって、企業は勿論、外国人労働者にとっても、良好な就労環境を築く手助けとなります。

特定技能と技能実習を、正しく、そして効率的に利用して、より質の高い人材を確保しつつ、より良い労働環境を作っていきたいですね。