介護分野で特定技能を持った外国人が働くまでの条件とは

2021年08月12日

慢性的な人材不足が問題視されている介護分野では、在留資格である「特定技能」を持った外国人の雇用が、新たな人材確保として注目されています。

今回は、実際に特定技能を持った外国人の方が日本の介護分野で雇用されるまでの条件や注意点について紹介していきます。

 

「介護」の特定技能について

外国人が日本で働くための在留資格である「特定技能」は、平成31年4月に制度が開始されました。

この制度の背景には、日本の少子高齢化による働き手不足が大きく関係しており、外国人の方を日本で働きやすくすることで、人材不足の改善を進めることを目的としています。

特定技能での在留ビザは現在のところ全部で14の特定産業で認められており、これらは主に人材確保が困難であったり、人材不足が深刻である分野に限られています。

介護分野も例外ではなく、高齢化社会による影響を大きく受ける産業であり、慢性的な人材不足や将来的なニーズの増加が今後の大きな問題となっています。

特定技能を持った外国人労働者が介護分野で活躍することで、人材不足の解消や、サービスの充実に繋がることが期待されています。

 

介護業界の深刻な人材不足

少子高齢化が進む日本で、介護業界の人材不足は多くの方が認知している問題かと思います。

しかし、介護業界で働く人の割合は年々増加しているというのも事実です。

では、なぜ深刻な人材不足は改善されないのでしょうか。

それは、働き手が増える以上のスピードで介護職の需要が増加しているからといえます。

日本の65歳以上の高齢者の割合は年々増加しており、2020年は3617万人、日本の総人口の28.7%が高齢者であるという状況です。

この高齢化社会は、将来的にさらに深刻になるとされており、それに伴い介護業界の需要は今後、増え続けることが予測されます。

 

介護分野での特定技能受け入れ人数

このような現状を鑑みて、特定技能を持った外国人労働者の受け入れを開始した日本ですが、外国人労働者の増加は、同時に日本人の雇用にも大きく影響をもたらします。

そのため、特定技能ビザによる外国人労働者の受け入れは上限を設けています。

受け入れ人数は各分野によって異なりますが、介護分野は6万人を上限とする特定技能を持った外国人を受け入れることになっています。

この上限は、定期的に見直しが行われており、業界の人手不足状況などが変われば、変更される場合があります。

 

介護の特定技能で在留資格を得るには

外国人が特定技能で介護職に就くためには、即戦力として働ける一定以上のスキルが無ければいけません。

技能実習生や留学生が介護の勉強をするのとは異なり、特定技能を有した人材として雇用されるためです。

そのために必要となるのが、一定以上の介護技能と仕事に支障がないレベルの日本語コミュニケーション能力です。

これらを証明するために以下の各国で実施される試験に合格する必要があります。

①「介護技能評価試験」に合格すること。

②「国際交流基金日本語基礎テスト」または「日本語能力試験(N4以上)」に合格すること。

③「介護日本語評価試験」に合格すること。

以上の試験をクリアすることで、介護分野での特定技能1号の在留資格を得ることができます。

では、これらは具体的にどのような水準が求められているのでしょうか。

 

介護技能評価試験

第1回目の試験は、2019年4月にフィリピンで行われました。

試験問題は全部で45問で、そのうち40問が学科試験で5問が実技試験となっています。

学科試験は、「介護の基本」「心とからだの仕組み」「コミュニケーション技術」「生活支援技術」の4つの分野から構成されており、それぞれ介護現場において必要な知識が求められます。

実技試験は、受験者が実際に勤務している施設や事業所に試験員が訪問し試験が行われます。

利用者に対して行われる身体介護業務や安全衛生業務などが適切に行われているかを判断します。

上記試験の合格者は、介護分野において一定の知識や技術を有しており、即戦力として働くことの出来る人材と認められます。

 

国際交流基金日本語基礎テスト、日本語能力試験

日本で生活し、働くためには介護の知識や技術だけでなく一定以上の日本語能力が必要とされます。

それを証明するための試験が、国際交流基金日本語基礎テストです。

日本の生活において必要なコミュニケーションが取れる日本語力を測定し、日常会話ができ、生活に支障がない程度の日本語力があるかどうかを判定されます。

この試験以外にも「日本語能力試験」という日本語能力を測る試験があり、どちらの受験でも問題ありません。

ただし、「日本語能力試験」はN1〜N5まであるレベルのうちN4以上と認定される必要があります。

N1が最も難しく、N5がもっとも易しいレベルとなっており、N4は基本的な漢字、語彙が使われた文章の理解、一般的な日常会話が出来る程度のレベルとなっています。

 

介護日本語評価試験

上記の国際交流基金日本語基礎テスト及び日本語能力試験では、日本で暮らすための日常会話レベルを問う試験でしたが、介護日本語評価試験では、介護業務をする上で必要とされる専門用語などを用いた日本語の能力が問われます。

前述した通り、特定技能の在留資格で就労する場合、即戦力となるような知識や技術が求められます。日本語での介護用語などが理解できないと、業務に支障をきたす恐れがあるため、一定以上の専門知識が求められます。

問題は全部で15問で、「介護の言葉」「介護の会話・声かけ」「介護の文書」の3つの分野より構成されており、総得点の60%以上の正答で合格となります。

 

試験が免除される場合

一定の条件を満たしている場合、これら試験が免除される場合があります。

試験免除の条件として以下のいずれかを満たしている必要があります。

①介護福祉士養成施設を修了している者

②EPA介護福祉士候補者として在留期間を満了した者

③第2号技能実習を修了した者

以上の条件の一つでも満たしている場合、十分な介護技能と日本語能力があるとみなされ、試験が免除されます。

 

まとめ

これら試験を合格することで、日本での特定技能による在留資格を得ることができるようになります。

介護分野での雇用は派遣雇用が認められておらず、直接雇用のみの雇用契約となります。

また、特定技能で外国人を雇用する際は、給与や福利厚生などを日本人と同等以上にすることが義務付けられていることから、外国人労働者は安定的な労働に従事することができます。

特定技能による外国人労働者の受け入れは制度が始まってあまり時間が経っていないため、まだ浸透していない部分もありますが、深刻な人材不足が問題となっている介護現場では、貴重な働き手として外国人の活躍が期待されています。