特定技能制度とは?概要をわかりやすく解説

2021年08月12日

特定技能とは、2018年12月の臨時国会で「出入国管理及び難民認定法及び法務省設置法の一部を改正する法律」が可決・成立、新設された在留資格を指します。

この特定技能とは、中小や小規模事業者など、人手不足が深刻な分野に、一定の専門性や技能を持ち、即戦力となる外国人を受け入れていくために始まったものです。

特定技能の制度による外国人の受け入れは、人材確保が困難な14の特定産業分野に限って実施され、大都市圏やその他、特定の地域に就労者が集中することのないよう配慮して人員配置が行われます。

つまり、都会よりも地方、大企業よりも中小企業の人手不足を解消するための制度であるといえます。

以前より実施されている技能実習(団体管理型)と、特定技能(1号)との違いとして、主なものは、外国人の技能水準と転籍・転職の可否です。

技能実習として入国する外国人に、求められる技能水準は特にありませんが、特定技能の場合、相当程度の知識又は経験が求められています。

また、技能実習制度を利用し、入国した場合、最初に就いた職場から転籍することはできません(実習実施者の倒産等やむを得ない場合を除く)。

しかし、特定技能の場合、同一の業務区分内又は試験によりその技能水準の共通性が確認されている業務分間においては転職が可能となっています。

 

「特定技能」外国人が活躍できる14分野

特定技能外国人が活躍できる職業は、以下の14分野です。

すべての分野における人材基準は、国際交流基金日本語基礎テスト、又は日本語能力試験N4以上(※)の日本語能力を持った外国人のみとなっています。

また、すべての分野の雇用形態は、直接雇用(農業と漁業のみ派遣雇用も可能)となっており、受入れ機関に対しては、担当省庁が組織する協議会に参加することや、調査又は指導に対して、必要な協力を行うこととが条件として課されています。

 

分野

技能試験

従事する業務

その他

介護

介護技能評価試験

・身体介護等(入浴、食事、排せつの介助等)のほか、レクリエーションの実施、機能訓練の補助等。注:訪問系サービスは対象外

・(※)に加えて、介護日本語評価試験。

・受入れ機関に対して課す条件は、事業所単位での受入れ人数枠の設定。

ビルクリーニング

ビルクリーニング分野特定技能1号評価試験

・建築物内部の清掃

・受入れ機関に対して課す条件は、「建築物清掃業」又は「建築物環境衛生総合管理業」の登録を受けていること。

素形材産業

製造分野特定技能1号評価試験

・鋳造・鍛造・ダイカスト・機械加工・金属プレス加工・工場板金・めっき・アルミニウム陽極酸化処理・仕上げ・機械検査・機械保全・塗装・溶接


 
 
 

産業機械製造業

製造分野技能1号評価試験

・鋳造・鍛造・ダイカスト・機械加工・塗装・鉄工・電子機器組立て・電気機器組立て・プリント配線板製造・プラスチック成形・金属プレス加工・溶接・工場板金・めっき・仕上げ・機械検査・機械保全・工業包装 

 

電気・電子情報関連産業

製造分野技能1号評価試験

・機械加工・金属プレス加工・工場板金・めっき・仕上げ・機械保全・電子機器組立て・電気機器組立て・プリント配線板製造・プラスチック成形・塗装・溶接・工業包装

 

建設

建設分野技能1号評価試験等

・型枠施工・左官・コンクリート圧送・トンネル推進工・建設機械施工・土工・屋根ふき・電気通信・鉄筋施工・鉄筋継手・内装仕上げ/表装・とび・建築大工・配管・建築板金・保温保冷・吹付ウレタン断熱・海洋土木工

受入れ機関は、建設業法の許可を受けていることや、日本人と同等以上の報酬を安定的に支払うこと、母国語で書面を交付することなど、複数の条件が課せられています。

造船・舶用工業

造船・舶用工業分野技能1号評価試験等

・溶接・塗装・鉄工・仕上げ・機械加工・電気機器組立て

・登録支援機関に支援計画の実施を委託する場合は、国交省が組織する協議会への参加、協力、調査、指導に協力している登録支援機関に委託することが条件です。

自動車整備

自動車整備分野

技能1号評価試験

・自動車の日常点検整備、定期点検整備、分解整備

・登録支援機関に支援計画の実施を委託する場合は、国交省が組織する協議会への参加、協力、調査、指導に協力している登録支援機関に委託することが条件です。

・道路運送車両法に基づく認証を受けた事業場であることも受入れ機関に課される条件です。

航空

特定技能評価試験(航空分野:空港グランドハンドリング、航空機整備)

・空港グランドハンドリング(地上走行支援業務、手荷物・貨物取扱業務等)・航空機整備(機体、装備品等の整備業務等)

・登録支援機関に支援計画の実施を委託する場合は、国交省が組織する協議会への参加、協力、調査、指導に協力している登録支援機関に委託することが条件です。

・空港管理規則に基づく構内営業承認等を受けた事業者又は航空法に基づく航空機整備等に係る認定事業場等であることも受入れ機関に課される条件です。

宿泊

農業技能測定試験

・フロント、企画・広報、接客、レストランサービス等の宿泊サービスの提供

・登録支援機関に支援計画の実施を委託する場合は、国交省が組織する協議会への参加、協力、調査、指導に協力している登録支援機関に委託することが条件です。

・「旅館・ホテル営業」の許可を受けた者であることも受入れ機関に課される条件です。

・風俗営業関連の施設に該当しないこと、風俗営業関連の接待を行わせないこと、といった条件が受入れ機関に課されます。


 

農業

農業技能測定試験

・耕種農業全般(栽培管理、農産物の集出荷・選別等)

・畜産農業全般(飼養管理、畜産物の集出荷・選別等)

・雇用形態は直接又は派遣です。

・登録支援機関に支援計画の実施を委託する場合は、農水省が組織する協議会への参加、協力、調査、指導に協力している登録支援機関に委託することが条件です。

・労働者を一定期間以上雇用した経験がある農業経営体であるといった条件が受入れ機関に課されます。

漁業

漁業技能測定試験(漁業又は養殖業)

・漁業(漁具の製作・補修、水産動植物の探索、漁具・漁労機械の操作、水産動植物の採捕、漁獲物の処理・保蔵、安全衛生の確保等)

・養殖業(養殖資材の製作・補修・管理、養殖水産動植物の育成管理・収獲(穫)・処理、安全衛生の確保等)

・雇用形態は直接又は派遣です。

・農水省が組織する協議会において協議が調った措置を講じることが受入れ機関に課せられる条件です。

・登録支援機関に支援計画の実施を委託する場合は、分野固有の基準に適合している登録支援機関のみに委託することが条件です。

飲食料品製造業

飲食料品製造業特定技能1号技能測定試験

・飲食料品製造業全般(飲食料品(酒類を除く)の製造・加工、安全衛生)

 

外食業

外食業特定技能1号技能測定試験

・外食業全般(飲食物調理、接客、店舗管理)

・風俗営業関連の施設に該当しないこと、風俗営業関連の接待を行わせないこと、といった条件が受入れ機関に課されます。

 

特定技能1号とは?

在留資格特定技能には、特定技能1号と、特定技能2号の2種類があります。

特定技能1号とは、以下のような内容の在留資格となります。

特定技能1号

特定産業分野に属する相当程度の知識又は経験を必要とする技能を要する業務に従事する外国人向け。

在留期間

1年、6か月又は4か月ごとの更新、上限は通算5年まで。

技能水準

試験等で確認。(技能実習2号終了の外国人は試験等免除)。

日本語能力水準

生活や業務に必要な日本語能力を試験等で確認(技能実習2号終了の外国人は試験等免除)。

家族の帯同

基本的に不可。

受入れ機関又は登録支援機関による支援

支援の対象。

受入れ分野

介護、ビルクリーニング、素形材産業、産業機械製造業、電気・電子情報関連産業、建設、造船・舶用工業、自動車整備、航空、宿泊、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業

 

技能実習2号とは、技能実習生として入国して、2~3年目となり、技能等に習熟した外国人を指します。

 

特定技能2号とは?

特定技能2号とは、以下の内容の在留資格となります。

特定技能2号

特定産業分野に属する熟練した技能を要する外国人向け。

在留期間

3年、1年又は6か月ごとの更新

技能水準

試験等で確認。

日本語能力水準

試験等での確認不要。

家族の帯同

配偶者、子を帯同可能(条件を満たす必要あり)。

受入れ機関又は登録支援機関による支援

支援の対象外。

受入れ分野

建設、造船・舶用工業(2分野のみ)

 

特定技能外国人の日本語能力について

特定技能外国人が携わる14分野の人材基準である、国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)とは、「ある程度日常会話ができ、生活に支障がない程度の能力」を判定するためのものです。

最も基礎の段階をA1とし、A2、B1、B2、C1、とレベルが上がっていき、最上位はC2(熟達した言語使用者)です。

特定技能1号の在留資格を得るために、必要となる日本語能力水準は、A2となっており、能力の目安としては、以下の通りとなっています。

  • ごく基本的な個人的情報や家族情報、買い物、近所、仕事など、直接的関係がある領域に関する、よく使われる文や表現が理解できる。 
  • 簡単で日常的な範囲なら、身近で日常の事柄についての情報交換に応ずることができる。
  • 自分の背景や身の回りの状況や、直接的な必要性のある領域の事柄を簡単な言葉で説明できる。
引用:独立行政法人国際交流基金|国際交流基金日本語基礎テストに係る試験実施要領
 

この試験は、コンピュータを使用するコンピューター・ベースト・ラスティング(CBT)方式で実施され、ベトナム、フィリピン、カンボジア、中国、インドネシア、タイ、ミャンマー、ネパール、モンゴル及び日本国内で受験が可能となっています。

この試験を通過し、在留資格を得た特定技能外国人は、初歩的な日常会話に対応できる日本語能力を持っているといえるでしょう。