日本は少子高齢化の影響で労働人口が減少し、多くの産業で人手不足の状態に陥っています。
特に深刻なのが外食業です。
労働環境や待遇面に対する不満による離職率が高く、日本人労働者からは敬遠されがちなため、人材確保が容易ではありません。
こうした悩みを抱える企業では、特定技能外国人の活用に関心が高まっています。
そこで今回は、特定技能外国人を外食業で雇用するための基礎知識をご紹介します。
特定技能は外食業の人手不足解消につながる
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在留資格の1つである「特定技能」は2019年4月に新設されました。
人手不足が顕著な「特定産業分野」と呼ばれる14業種で、それまで認められていなかった外国人労働者の受け入れを開始したのです。
外食業は特定産業分野の中で最も人手不足が深刻な業種です。
農林水産省のデータでは、有効求人倍率は外食業が全産業平均よりもはるかに高くなっています。
また、欠員率においても、外食業を含む「宿泊業、飲食サービス業」は全産業の2倍以上でした。
出典:外食業分野における新たな外国人材の受け入れについて「農林水産省」
https://global-resource.co.jp/wp/wp-content/themes/globalresource/assets/pdf/%E3%8A%B8.pdf
データからも明らかなように、日本国内での人材確保は難しいのが現状です。
そのため、外食業の特定技能での外国人労働者受け入れが急務となりました。
インバウンド需要が年々急拡大していたことも、外国人労働者受け入れ拡大を後押ししています。
人手不足に加えて外国人客への対応も、より一層求められているからです。
2020年3月以降は新型コロナウイルス感染症による影響があるものの、中長期ではインバウンド需要が増えるのは明らかです。
また、今後も外食業界の人手不足は進む一方と見られ、2022年にはおよそ29万人の不足が予想されています。
外食業でこれほどの人手不足になっている要因は、次の2つの課題によるものです。
外食業の課題
労働環境
外食業では拘束時間が長く、休みも少ない傾向にあります。
厳しい労働環境は従業員の健康に悪影響を及ぼし、離職につながるのです。
また、労働環境の悪さは世間にも認知され、新規採用にも応募が集まらなくなります。
その結果、人手不足に拍車がかかり、従業員の負担がさらに増える悪循環を生み出しています。
賃金が低い
厚労省の統計では、宿泊業および飲食サービス業の平均年収は324.2万円で、産業別に見ると最も低くなります。
労働環境が悪く賃金も低いため、従業員の確保が難しくなっているのです。
出典:令和2年 賃金構造基本統計調査結果の概況「厚生労働省」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2020/dl/05.pdf
特定技能は外食業で従事可能な業務範囲がほぼ無制限
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外食業における特定技能の在留資格保有者は、外食業全般での従事が可能です。
従事可能な範囲はほぼ無制限で、就労時間も日本人と同じになります。
【主な業務内容】
- 接客
- 調理
- デリバリー
- 店舗管理 etc...
ただし、接待を伴う飲食業での就業は認められていません。
クラブやキャバレーだけでなく、通常の外食業の場合でも禁止されるケースがあります。
例えば、バーなどの歓楽的な雰囲気のあるお店で、お酒を注ぐといった行為は接待とみなされるでしょう。
外食業における特定技能の資格取得要件
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特定技能の在留資格には「特定技能1号」と「特定技能2号」の2つがあります。
外食業で就労可能なのは特定技能1号です。
特定技能1号(外食業)の在留資格を取得するには、以下の要件を満たす必要があります。
- 18歳以上であること
- 特定技能測定試験の合格者
「特定技能測定試験」には「日本語能力試験」と「外食業技能1号測定試験」があり、どちらも合格しなければなりません。
日本語能力試験
日常生活や業務で必要とされる程度の日本語力を有していること。
求められるレベル:
- 日本語能力試験N4以上(国内・国外)
- 国際交流基金日本語基礎テスト(国外)
外食業技能1号測定試験
従事する分野における必要な知識や経験を相当程度有していること。
「一般社団法人外国人食品産業技能評価機構(OTAFF)」により運営され、日本全国で試験を実施しています。
2020年11月の試験で合格した外国人は4,211人中1,979人(合格率47%)でした。
海外でも次の6ヶ国で試験が行われています。
- インドネシア
- フィリピン
- カンボジア
- ネパール
- タイ
- ミャンマー
特定技能外国人を外食業で雇用するには?
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特定技能外国人を外食業で雇用するには「直接雇用」でなければなりません。
派遣は認められておらず、報酬も日本人と同等の能力を有し、同じ業務を行っている場合は、日本人と同等にする必要があります。
給与の支払いについては「銀行振込」でなければなりません。
また、特定技能外国人を雇用する企業には次の条件が求められます。
在留期間が満了した外国人の帰国を担保する
特定技能1号での在留期間は通算5年としています。
そのため、雇用期間満了を迎えた外国人は帰国しなければなりません。
もし外国人労働者に帰国する費用が無ければ、受け入れた企業が肩代わりするとの内容を雇用契約書に含める必要があります。
食品産業特定技能協議会に加入
「食品産業特定技能協議会」は「特定技能」を適正運用するための統括機関です。
農林水産省、特定技能所属機関、登録支援機関、業界団体、関係省庁の連携を強めるために設置されました。
特定技能外国人を雇用する企業は、外国人労働者を受け入れてから4ヶ月以内に加入しなければなりません。
支援体制構築もしくは登録支援機関に委託
特定技能外国人の受け入れには、企業側の支援体制が構築されている必要があります。
支援内容は、「事前ガイダンス」や「出入国時の送迎」、「生活上の支援」など様々です。
こうした受け入れ時の負担を軽減させたい企業は「登録支援機関」を活用できます。
登録支援機関は、受け入れ企業から支援業務の全てを委託され実施できる機関です。
出典:在留資格「特定技能」について「出入国在留管理庁」
https://www.meti.go.jp/press/2019/08/20190809002/20190809002-1.pdf
↓ 登録支援機関についての詳しい記事はこちらから ↓
特定技能外国人は外食業になくてはならない存在
人手不足が深刻な外食業では、特定技能外国人の存在が必要不可欠です。
多くの外国人労働者を受け入れることは、課題となっている労働環境の改善にもつながります。
外食業ではすでに多くの外国人が働いていますが、特定技能が新設されたことでより多くの企業が受け入れを進めるでしょう。
受け入れ企業は特定技能外国人をしっかりと支援し、責任を持って雇用しなければなりません。
外国人労働者も雇用主である企業も、共に制度を適正に運用していくことが求められます。