私たちが住まう日本では近年、様々な業界における人手不足が顕著になってきています。
そんな時に活躍するのが「外国人人材」です。
最近では政府が外国人人材に対する様々な政策を打ち出しており、外国人が日本で働くことが当たり前になってきています。
しかし、いざ人手不足のために外国人人材を採用しようとしても、様々な規定を把握し適切に支援計画の策定をするのが難しい現状があります。
そこで本記事では、在留資格「特定技能」の詳しい解説、採用における流れや注意点、試験内容など網羅的に詳しく解説していきます。
在留資格「特定技能」とは?
在留資格「特定技能」とは、JITCO(公益財団法人 国際人材協力機構)によって以下のように説明されています。
“ 中小・小規模事業者をはじめとした深刻化する人手不足に対応するため、生産性向上や国内人材の確保のための取組を行ってもなお人材を確保することが困難な状況にある産業上の分野において、一定の専門性・技能を有し即戦力となる外国人を受け入れていくものです。 ”
上述のように、在留資格「特定技能」の新設により新たな外国人人材の受け入れが可能となりました。
そして在留資格「特定技能」は、近年の日本における人手不足解消において非常に重要な役割を果たしています。
以下では、そんな在留資格「特定技能」の取得条件や評価試験等について解説していきます。
在留資格「特定技能」の取得条件
在留資格「特定技能」の取得条件は以下の通りです。
- 特定技能評価試験に合格する
- 技能実習2号を修了する
それぞれ詳しく見ていきましょう。
特定技能評価試験
「特定技能評価試験」とは、国が各業種ごとに定めている、必要な知識・スキルを測るために実施している試験のことです。
主に「技能水準」「日本語能力水準」に分けて実施されています。
以下で分野別に実施済(予定)試験を記載していきます。
●14分野共通 … 国際交流基金日本語基礎テスト((独)国際交流基金)
●介護 … 介護日本語評価試験、介護技能評価試験
●ビルクリーニング … ビルクリーニング分野特定技能1号評価試験((公社)全国ビルメンテナンス協会)
●素形材産業、産業機械製造業、電気・電子情報関連産業 … 製造分野特定技能1号評価試験
●建設 … 建設分野特定技能1号評価試験(特定技能外国人受入事業実施法人)
●造船・舶用工業 … 造船・舶用工業分野特定技能1号評価試験((一財)日本海事協会)
●自動車整備 … 自動車整備分野特定技能評価試験((一社)日本自動車整備振興会連合会)
●航空 … 航空分野特定技能評価試験(空港グランドハンドリング)((公社)日本航空技術協会)
、航空分野特定技能評価試験(航空機整備)((公社)日本航空技術協会)
●宿泊 … 宿泊業技能測定試験((一社)宿泊業技能試験センター)
●農業 … 農業技能測定試験(耕種農業全般)((一社)全国農業会議所)、農業技能測定試験(畜産農業全般)((一社)全国農業会議所)
●漁業 … 漁業技能測定試験(漁業)((一社)大日本水産会)、漁業技能測定試験(養殖業)((一社)大日本水産会)
●飲食料品製造業 … 飲食料品製造業 飲食料品製造業技能測定試験((一社)外国人食品産業技能評価機構)
●外食業 … 外食業 外食業技能測定試験((一社)外国人食品産業技能評価機構)
技能実習2号
外国人の技能実習生は「技能実習1号」と「技能実習2号」という二つの区分に分けられます。
技能実習1号とは、外国人の入国時(入国初年度)に与えられる在留資格のことであり、この資格を与えられることで技能実習を行うことが可能となります。
技能実習1号は、「JITCO認定期間」や「職業能力開発協会」が実施する検定に合格する必要があります。
そして技能実習2号とは、技能実習1号の期間中に得た技術や知識をさらに深めるために与えられる在留資格のことです。
技能実習1号から技能実習2号に移行するためには、実習での評価が一定以上に達している必要があり、そのほか技能実習計画の評価や在留状況の評価など適切な計画のもと実習が行われているかどうかも審査の対象となります。
在留資格「特定技能」ができた背景
在留資格「特定技能」は、もともと中小企業の人手不足が背景にありました。
国内の日本人労働者の数が年々減少してきていることとは裏腹に、企業の人手不足が深刻化してきているという現状があります。
そうした労働力の穴を埋めようとする動きが、在留資格「特定技能」の誕生につながったのです。
さらに在留資格「特定技能」の狙いはもう一つあり、上記で紹介した、技能実習制度からの移行があります。
現在の試算として、2022年あたりには業界業種によっては約9割ほどが技能実習生からの移行になると見込まれています。
特定技能1号について
特定技能1号は近年設立された、新たな外国人受け入れの制度のことです。
以下で特定技能1号について詳しく解説していきます。
●どのような資格?
先ほども簡単に説明しましたが、特定技能1号とは「特定産業分野に属する相当程度の知識又は経験を必要とする技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格」のことです。
家族の帯同等は基本的に認められていないのが現状です。
後述の受け入れ機関や登録支援機関による支援の対象となっています。
●在留期間について
在留期間は1年,6か月又は4か月ごとの更新,通算で上限5年までです。
●技能実習との相違点
先ほど「技能実習1号」「技能実習2号」「特定技能1号」「特定技能2号」など似た言葉がたくさん出てきて混乱するかと思いますが、「技能実習」と「特定技能」はそれぞれ別物です。
以下でそれぞれの項目について違いを簡単に列挙していきます。
●制度の目的
- 技能実習 … 就労先の国で培った技術や知識を母国に還元することを目的としている
- 特定技能 … 日本の人手不足の解消を目的としている
●就業可能な業種/職種
非常に多いためここでは書ききれませんが、特定技能1号に関しては大まかに以下のような分野で就業が可能です。
- 介護分野
- ビルクリーニング分野
- 素形材産業分野、産業機械製造業分野、電気・電子情報関連産業分野
- 建設分野
- 造船舶用工業分野
- 自動車整備分野
- 航空分野
- 宿泊分野
- 農業分野
- 漁業分野
- 飲食料品製造業分野
- 外食業分野
●転職の可否
- 技能実習 … なし(就労という形ではないので転職の概念が存在しない)
- 特定技能 … 同一職種内での転職が可能
●家族滞在の可否
- 技能実習 … 不可
- 特定技能 … 特定技能2号の場合に限り家族滞在可能
●受け入れ人数制限
- 技能実習 … 受け入れの人数制限あり
- 特定技能 … 受け入れ人数の制限なし
●日本語能力・技能水準は?
特定技能1号の日本語能力、技能水準は以下の通りになります。
・技能水準:試験等で確認(技能実習2号を良好に修了した者は試験等免除)
・日本語能力水準:生活や業務に必要な日本語能力を試験等で確認(技能実習 2 号を良好に修了した者は試験等免除)
各技能試験や日本語試験の情報に関しては、以下のURLから詳しい情報を確認することが可能です。
【技能試験情報】
●介護分野(厚生労働省) … https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_000117702.html
●ビルクリーニング分野(全国ビルメンテナンス協会) … https://www.j-bma.or.jp/qualification-training/zairyu
●製造3分野(素形材産業分野、産業機械製造業分野、電気・電子情報関連産業分野)… https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/gaikokujinzai/index.html
●建設分野(建設技能人材機構) … https://jac-skill.or.jp/exam.html
●造船/舶用工業分野(日本海事協会) … http://www.classnk.or.jp/hp/ja/authentication/evaluation/index.html
●自動車整備分野(日本自動車整備振興会連合会) … https://www.jaspa.or.jp/mechanic/specific-skill/index.html
●航空分野(日本航空技術協会) … https://www.jaea.or.jp/
●宿泊分野(宿泊業技能試験センター) … https://caipt.or.jp/
●農業分野(日本農業会議所) … http://asat-nca.jp/
●漁業分野(大日本水産会) … https://suisankai.or.jp/
●飲食料品製造業分野(外国人食品産業技能評価機構) … https://otaff.or.jp/
●外食業分野(外国人食品産業技能評価機構) … https://otaff.or.jp/
【日本語試験情報】
●国際交流基金日本語基礎テスト(国際交流基金) … https://www.jpf.go.jp/jft-basic/
●日本語能力試験(国際交流基金/日本国際教育支援協会) … https://www.jlpt.jp/
【日本語試験(介護分野)】
●介護日本語評価試験(厚生労働省) … https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_000117702.html
特定技能2号について
●どのような資格?
在留資格「特定技能」には,先ほどご紹介した特定技能1号と特定技能2号の2種類があります。
その中でも特定技能2号は,特定産業分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格です。
特定技能1号よりも限定的な職種での就労となるため、必然的に2号技能生の方が人数が少ないのが現状です。
●在留期間について
在留期間は3年、1年又は6か月ごとの更新となっています。
特定技能1号よりも在留期間が長めに設定されています。
●日本語能力・技能水準は?
特定技能2号の日本語能力、技能水準は以下の通りになります。
- 技能水準:試験等で確認
- 日本語能力水準: 試験等での確認は不要
特定技能外国人の採用フロー
特定技能外国人の採用フローを詳しく解説していきます。
※①技能実習・留学など,その他の在留資格をもって日本国内に既に在留している外国人を雇用するまでと,②海外から,特定技能の在留資格をもって新規で日本で就労する外国人を雇用するまでとに分けて解説します。
●技能実習・留学など,その他の在留資格をもって日本国内に既に在留している外国人を雇用する際の流れ
- (外国人が)試験に合格又は技能実習2号を修了
- 特定技能外国人と雇用契約を結ぶ。※1(登録支援機関と委託契約の締結※2)
- 特定技能外国人の支援計画を策定する。
- 在留資格変更許可申請を地方出入国在留管理局へ行う。※3
- 「特定技能1号」へ在留資格変更
- 就労開始
●海外から,特定技能の在留資格をもって新規で日本で就労する外国人を雇用する流れ
- (外国人が)試験に合格又は技能実習2号を修了(帰国済み)
- 特定技能外国人と雇用契約を結ぶ。※1(登録支援機関と委託契約の締結※2)
- 特定技能外国人の支援計画を策定する。
- 在留資格認定証明書交付申請を地方出入国在留管理局へ行う。※3
- 在留資格認定証明書受領
- 在外公館に査証(ビザ)申請
- 査証(ビザ)受領
- 入国
- 就労開始
※1 … 契約締結後に以下の項目を必ず実行する必要あり
・健康診断
・受け入れ機関等による事前ガイダンス
※2… 1号特定技能外国人支援計画の一部の実施を第三者に委託したり,その全部の実施を登録支援機関に委託することが可能(一部の委託を行う場合には,受入れ機関において,支援体制の基準を満たす必要あり)。
※3⇒主な添付資料↓↓
・ 受入れ機関の概要
・特定技能雇用契約書の写し
・1号特定技能外国人支援計画
・日本語能力を証明する資料
・技能を証明する資料 等
特定技能所属機関について
文中でもちらっと解説しましたが、特定技能所属機関とは、外国人人材を受け入れる機関のことです。
簡単にいうと、外国人人材を雇用する企業側のことを「特定技能所属機関」と呼ぶということです。
以下では、特定技能所属機関が外国人人材を採用する際の流れや特定技能所属機関になるための条件、注意点などを解説していきます。
特定技能所属機関として外国人を採用する流れ
特定技能所属機関として外国人を採用する流れは以下の通りです。
- 特定技能における外国人人材を探す
- 各選考フローを踏み、採用が決まったら「特定技能雇用契約」を結ぶ
- 「1号特定技能外国人支援計画」を策定する
- 出入国在留管理庁にて、外国人人材の在留資格を「特定技能」へ変更申請を行う
- 入社前に取り決めた支援計画をもとに外国人人材の支援を行なっていく
- 外国人人材として雇用
上記のような流れで進んでいきます。
特定技能所属機関になるための条件
特定技能所属機関として外国人人材を採用するには、以下の基準を満たす必要があります。
【特定技能所属機関としての基準】
(1)外国人と結ぶ雇用契約が適切であること
●特定技能外国人の報酬の額や労働時間などが日本人と同等以上 etc…
(2)受入れ機関自体が適切であること
●法令等を遵守し「禁錮以上の刑に処せられた者」などの欠格事由に該当しないこ
と(5年以内に法令違反がないこと)
●保証金の徴収や違約金契約を締結していないこと etc…
(3)外国人を支援する体制があること(外国人が理解できる言語でコミュニケーションが取れるかどうか)
(4)外国人を支援する計画が適切であること
【特定技能所属機関としての義務】
(1)外国人と結んだ雇用契約を確実に履行すること
(2)外国人への支援を適切に実施すること
(3)出入国在留管理庁及びハローワークへの各種届出
特定技能外国人の受入れ後は,受入れ状況等について,地方出入国在留管理局及びハローワークに定期又は随時の届出を行う。
上記の基準を満たして外国人人材を受け入れた後も、上記の基準をしっかり守りつつ以下で解説する注意点も留意しておく必要があります。
外国人の支援計画を策定する際に注意すること
1号特定技能外国人を受け入れる受入れ機関は、当該外国人が「特定技能1号」の活動を安定的かつ円滑に行うことができるようにするための職業生活上,日常生活上または社会生活上の支援の実施に関する計画(1号特定技能外国人支援計画)を作成し,当該計画に基づいて支援を行わなければなりません。
その支援計画を策定する際に、必ず記載が必要な項目は以下の通りです。
【支援計画の主な記載事項】
●支援責任者の氏名及び役職等
●登録支援機関(登録支援機関に委託する場合のみ)
●下記の10項目
- 事前ガイダンス
- 出入国する際の送迎
- 住居確保・生活に必要な契約支援
- 生活オリエンテーション
- 公的手続等への同行
- 日本語学習の機会の提供
- 相談・苦情への対応
- 日本人との交流促進
- 転職支援(人員整理等の場合)
- 定期的な面談・行政機関への通報
参考:出入国在留管理庁「特定技能ガイドブック~特定技能外国人の雇用を考えている事業者の方へ~」
登録支援機関について
文中でも少し出てきた登録支援機関とは、一体どのような機関なのでしょうか。
以下では登録支援機関がどのような機関なのか、また、登録支援機関を利用する際の費用相場等を詳しく見ていきたいと思います。
登録支援機関とは?
「登録支援機関」とは、外国人人材の支援計画策定が自社内のリソースでは難しい場合に、代わりに外国人人材の支援計画の策定から育成まで行ってくれる機関のことです。
全ての業務を委託する必要がないという場合でも、一部の業務のみ委託することも可能です。
登録支援機関になるためには,受入れ機関と業務委託のための契約を結び,出入国在留管理庁長官の登録を受ける必要があるため、特定技能所属機関は安心して外国人人材の支援を任せることができるでしょう。
登録支援機関の費用相場
登録支援機関には様々な企業があります。
委託の際の費用相場としては20,000円~30,000円と言われています。
技能実習生が平均35,000円あたりであることと比べると委託しやすい金額と言えるでしょう。
しかし、A社では外国人一人当たり20,000円だったのに対し、B社では外国人一人当たり40,000円なんてこともザラにあります。
外国人人材を大量に採用するのであれば、コスト面をしっかりと考慮して機関を選び必要がありますが、少人数の採用の場合は、料金よりも
・対応可能言語
・所在地
・実績
を確認しておくのがよいでしょう。
特に対応可能言語や所在地の確認は重要で、スムーズに支援機関とのやりとりが行えなかったり、外国人人材の教育が行き届かなかったりするので必ず確認しておくようにしましょう。
特定技能外国人の雇用に際する注意点
特定技能外国人を雇用する際、支援計画の策定だけではなく、他にも注意することがあります。
それが、「特定技能雇用契約」と「社会保険」です。
以下でそれぞれの項目について詳しく解説していきます。
特定技能雇用契約
特定技能雇用契約とは、外国人人材と受け入れ企業(特定技能所属機関)の間で締結する契約のことです。
特定技能雇用契約では、以下のことを定める必要があります。
●労働時間
●報酬額
●有給休暇について
●帰国の際の旅費
●差別の禁止
●生活状況の把握
上記の項目は必須であり、これが記載されていない場合は法律違反になる可能性が高いので十分注意しながら契約の締結を行う必要があります。
社会保険について
私たちは日本に住んでいるので、基本的に従業員たちは社会保険に加入していますが、それは外国人人材でも関係なく必ず加入させる必要があり、義務となっています。
厚生年金や健康保険の加入が義務となっている法人等を「強制適用事業所」と言いますが、この場合は、加入の際に国籍を問わないことになっているため、強制適用事業所の場合は特に保険への加入義務があるのです。
知らずに保険未加入のままでいると法律違反ですので、内容を確認した上でしっかりと契約書を作成することが大切です。
法令や制度を理解した上で正しく外国人人材を採用しよう
本記事では特定技能における、採用の流れや支援計画の策定、技能/日本語試験などに関して解説してきました。
外国人人材を採用するには様々な注意すべき点がありましたが、そういったことに対して自社内でリソースを割けない場合は、「登録支援機関」の利用も検討してみてもいいかもしれません。
しかし、外国人の大量採用となった場合には費用もかなりかさばるので、自社内のリソースで解決できる部分は解決し、解決できない部分だけ登録支援機関に任せるなど、うまく活用することで費用を削減できます。
この機会にぜひ、自社にあったやり方で外国人人材を採用してみてはいかがでしょうか。