「介護分野における特定技能外国人採用の注意点は?試験内容や日程も解説」

2021年08月12日

今日では少子高齢化による労働力不足がますます深刻化してきており、今後も減少の一途を辿ることになると見られています。

そうした背景もあり、日本では平成31年に「特定技能」という制度が開始されました。

特に人材不足で万年悩まされている「介護」業界に関しても例外無くこの制度の対象になっています。

しかし、この制度は教育方法の決まりやその他細かな規定などが多く、なかなか初めての方が理解するのも難しい内容となっています。

そこで本記事では、特定技能「介護」の可能業務や資格所得方法、その他注意点に関して詳しく解説していきたいと思います。

 

介護分野における特定技能とは

 

介護分野における特定技能とは、先述の通り平成31年に制定された、各分野における人材不足を解消するための制度です。

現在日本では「少子高齢化」が世界的にみてもかなりの加速度的ペースで進んでおり、介護業界も人材不足は進む一方で需要が高まってきているため、早急に対応を取る必要があります。

特定技能「介護」はその問題を解決するにあたって重要な役割を果たすといえます。

 

特定技能外国人介護人材が日本で就労するのに必要な条件

 

特定技能外国人介護人材が日本で就労するのに必要な条件は以下の通りです。

・介護技能と日本語能力の試験に合格
・介護福祉士養成施設を修了すること(上記の試験不要)
・「EPA介護福祉士候補者」として在留期間を満了する(4年)

それぞれ見ていきましょう。


介護技能と日本語能力の試験に合格


特定技能外国人人材が日本で就労するためには、介護技能と日本語能力の試験に合格する必要があります。

合格要件として、技能試験と2種類の日本語試験に合格することが定められています。

 

●技能試験(必須) … 介護技能評価試験

この試験は、介護業務の基盤となる能力や考え方等に基づき、利用者の心身の状況に応じた介護を自ら一定程度実践できるレベルであることを認定するものであり、この試験の合格者は、介護分野において、一定の専門性・技能を用いて即戦力として稼働するために必要な知識や経験を有するものと認める。

(評価方法)

試験言語:現地語
実施主体:予算成立後に厚生労働省が選定した民間事業者
実施方法:コンピューター・ベースド・テスティング(CBT)方式

 

●日本語試験(必須) … 介護日本語評価試験

ある程度日常会話ができ、生活に支障がない程度の日本語能力を有することを確認の上、「介護日本語評価試験(仮称)」を通じ、介護現場で介護業務に従事する上で支障のない程度の水準の日本語能力を確認する。

(評価方法)

実施主体:予算成立後に厚生労働省が選定した民間事業者
実施方法:コンピューター・ベースド・テスティング(CBT)方式

 

●日本語試験(1つ選択) … 国際交流基金日本語基礎テスト or 日本語能力試験N4以上

 

・国際交流基金日本語基礎テスト

当該試験は、本制度での受入れに必要となる基本的な日本語能力水準を判定するために国際交流基金が開発・実施する試験であるところ、これに合格した者については、ある程度日常会話ができ、生活に支障がない程度の能力を有するものと認められることから、基本的な日本語能力水準を有するものと評価する。

(評価方法)

実施主体:独立行政法人国際交流基金
実施方法:コンピューター・ベースド・テスティング(CBT)方式

 

・日本語能力試験N4以上

当該試験に合格した者については、「基本的な日本語を理解することができる」

と認定された者であることから、ある程度日常会話ができ、生活に支障がない程

度の能力を有するものと認められ、本制度での受入れに必要となる基本的な日本

語能力水準を有するものと評価する。

(評価方法)

実施主体:独立行政法人国際交流基金及び日本国際教育支援協会
実施方法:マークシート方式

 

出典:厚生労働省「『介護分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針』に係る運用要領」


 介護福祉士養成施設を修了すること(上記の試験不要)


 介護福祉士養成施設を修了した方に関しては、上記で紹介した試験を免除することが可能です。

介護福祉士養成施設を修了した方は、介護に従事するものとして十分な日本語の能力、また介護に関する技能や知識を有しているものとみなされます。

介護福祉士養成施設では、技能だけでなく日常生活における日本語のコミュニケーションスキルも養成しているため、厚生労働省も上記の試験免除を認可しているのです。

 

「EPA介護福祉士候補者」として在留期間を満了する(4年)

 

EPA介護福祉士候補者とは、日本の介護施設において就労してスキルを磨き、介護福祉士国家資格の取得を目指す方のことです。

以下、厚生労働省のHPに記載されている内容を一部抜粋したものです。

“EPA介護福祉士候補者入国・就労に当たり一定の日本語能力を備えていること及び訪日後日本語研修等の修了が求められること等に加え、EPA介護福祉士候補者としての研修は、厚生労働省の定める受入れの実施に関する指針(厚生労働省告示)に基づき、介護福祉士養成施設と同等の体制が整備されている等の要件を満たした介護施設等において、研修を統括する研修責任者並びに専門的な知識及び技術に関する学習や日本語学習の支援等を行う研修支援者が配置された上で、日本語で実施される介護福祉士国家試験の受験に配慮した適切な内容の研修を実施するための介護研修計画が作成される。”
出典:厚生労働省「『介護分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針』に係る運用要領」

 

介護福祉士養成施設を修了する

 

最後に、介護福祉士養成施設を無事に修了することが挙げられます。

厚生労働省のHPでは以下のように詳細が記されています。

“介護福祉士養成施設については、留学に当たり、日本語教育機関で6か月以上の日本語の教育を受けたこと等が求められることに加え、入学後の2年以上の養成課程において 450 時間の介護実習のカリキュラムの修了が求められる。”

(評価方法)

介護福祉士養成課程は、教育内容等に関する一定の指定基準を満たす専修学校等を都道府県知事等が指定する仕組みとなっており、当該養成課程の修了者であることを卒業証明書等で確認・評価する。

出典:厚生労働省「『介護分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針』に係る運用要領」

 

 

特定技能1号外国人が可能な業務

 

厚生労働省によると、特定技能1号外国人が可能な業務は以下のように記されています。

●1号特定技能外国人が従事する業務

介護分野において受け入れる1号特定技能外国人が従事する業務は、上記第1の試験合格等により確認された技能を要する身体介護等(利用者の心身の状況に応じた入浴、食事、排せつの介助等)の業務をいう。

あわせて、当該業務に従事する日本人が通常従事することとなる関連業務(例:お知らせ等の掲示物の管理、物品の補充等)に付随的に従事することは差し支えない。

また、1号特定技能外国人の就業場所は、技能実習同様、「介護」業務の実施が一般的に想定される範囲、具体的には、介護福祉士国家試験の受験資格要件において「介護」の実務経験として認められる施設とする。

出典:厚生労働省「『介護分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針』に係る運用要領」

 

上記の内容を簡単にまとめると、              

  • 利用者の入浴、食事、排せつの介助
  • お知らせ等の掲示物の管理、物品の補充

が主な業務内容となっています。

 

介護分野の特定技能1号外国人の受け入れ準備

 

介護分野かどうかに関わらず、特定技能1号外国人を受け入れるには

・特定技能外国人支援計画の策定
・分野別特定技能協議会

が必要になってきます。

以下でそれぞれについて詳しく解説していきます。

 

特定技能外国人支援計画の策定

特定技能外国人を受け入れるためには、まず始めに特定技能外国人の支援計画の策定を行わなければなりません。

例としては、特定技能外国人が住まう家の確保や仕事、生活面でのオリエンテーション、各種申請における書面の作成方法など非常に多岐にわたります。

自社内のリソースを活用して計画の策定を行う場合もありますが、それが厳しい場合は「登録支援機関」に依頼するという方法もあります。

登録支援機関については、以下の記事で詳しく解説しています。

 

分野別特定技能協議会

分野別特定技能協議会とは、14業種それぞれに所管省庁が設置している機関のことです。

この機関に加入する目的として、特定技能外国人の適切が行われているかどうかを調査、指導を実施すること、また特定技能外国人を受け入れるための体制づくりが主な目的です。

この分野別の特定技能協会には、特定技能外国人が入国後4ヶ月以内に加入する必要があります。

 

介護分野の特定技能協議会への加入の流れは以下のURLから確認できます。

参考:介護分野における特定技能協議会への加入の流れ

 

申請に必要な書類

 

それでは、介護分野における特定技能外国人を受け入れるための必要書類について解説していきます。

下記の必要書類は一例で、受け入れ側や特定技能外国人の状況に応じて追加で資料が必要になる場合もある点にご注意ください。

【必要書類】

●特定技能外国人の在留諸申請に係る提出書類一覧・確認表
●申請する特定技能外国人の名簿
●返信用封筒
●在留資格認定証明書交付申請書
●特定技能外国人の報酬に関する説明書
●特定技能雇用契約書の写し
●雇用条件書の写し
●事前ガイダンスの確認書
●支払費用の同意書及び費用証明書
●徴収費用の説明書
●特定技能外国人の履歴書

【試験等により証明する場合:技能水準】

●技能試験の合格証明書の写し又は合格を証明する資料
●その他の評価方法により技能水準を満たすことを証明する資料

【試験等により証明する場合:日本語水準】

●日本語試験の合格証明書写し又は合格したことを証明する資料
●その他評価方法により日本語水準を満たすことを証明する資料

【技能実習2号を良好に修了した者であることを証明する場合】

●技能検定3級又はこれに相当する技能実習評価試験の実技試験に合格したことを証明する資料
●技能実習生に関する評価調書

 

介護分野の特定技能外国人を受け入れる際の注意点

キーボードとマウス

自動的に生成された説明

 

特定所属機関側が介護分野の特定技能外国人を受け入れる場合、以下の点に注意する必要があります。

  • 報酬額が日本人従事者の額と同等以上であること
  • 一時帰国を希望した場合、休暇を取得させること
  • 報酬、福利厚生施設の利用等の待遇で差別的取扱いをしていないこと

 

雇用を締結する際、以上の条件をしっかりと遵守する必要があります。

技能実習生やEPA介護福祉士候補者の場合、決められた研修期間を経た後に就労報酬が発生します。

特定技能「介護」の場合、来日し就労したタイミングで報酬が算定されます。

 

介護技能評価試験・介護日本語評価試験の費用や試験内容

テキスト, 手紙

自動的に生成された説明

 

次に、介護技能評価試験・介護日本語評価試験の試験内容や試験にかかる費用などを解説します。

 

介護技能評価試験

介護日本語評価試験

問題数・
試験時間・

試験科目

全45問 60分

(学科試験:40問)
・介護の基本(10問)
・こころとからだのしくみ(6問)
・コミュニケーション技術(4問)
・生活支援技術(20問)

(実技試験:5問)
・判断等試験等の形式による実技試験課題を出題

出題基準

全15問 30分

・介護のことば(5問)

・介護の会話・声かけ(5問)

・介護の文書(5問)

実施方法

コンピューター・ベースド・テスティング(CBT)方式

サンプル問題

介護技能評価試験

介護日本語評価試験

受験手数料

1,000円程度

1,000円程度

試験結果の通知

試験結果の通知 試験終了後、試験会場のコンピュータ画面上で試験結果を表示。
試験実施後5営業日以内を目途に、専用ウェブサイトにおいて、受験者が受験者名、試験名、試験日、顔写真、総合スコア、合否などの情報をスコアレポートとして取得可能。

※合格基準:問題の総得点の60%以上

出典:厚生労働省「介護分野における特定技能外国人の受け入れについて」

 

試験学習におすすめのテキスト

テーブルの上に置かれた本

中程度の精度で自動的に生成された説明

 

介護技能評価試験・介護日本語評価試験の試験勉強におすすめのテキストは、厚生労働省によって無料で公開されているので、確認しておきましょう。

<介護の特定技能評価試験学習用テキストDLリンク>

日本語版
英語版
クメール語版
インドネシア版
中国語版
ネパール語版
モンゴル語版
ベトナム語版
ビルマ語版
タイ語版

 

介護分野の人手不足対策に外国人人材を雇用しよう

近年では介護分野を含む多くの業界で人手不足が深刻化してきています。

しかし、人手不足に対する対策を行うには各特定所属機関が煩雑な手続きを踏み、外国人労働者の受け入れ態勢を整える必要があります。

そんな時には、先ほども少し紹介した「登録支援機関」を利用してみてはいかがでしょうか。

登録支援機関は、外国人労働者の受け入れに必要な手続きや避けては通れない支援計画の策定、その後の教育を代わりに行ってくれる機関です。

自社内のリソースを支援計画の策定に割けない場合は多いかと思います。

その際は登録支援機関を利用し、受け入れの負担を減らすことを検討してみてはいかがでしょうか。