▼はじめに
多くの産業分野で人手不足が叫ばれ始めて久しい昨今ですが、こと介護分野では近年の利用者増加に伴い、人材確保の必要性は急務となりつつあります。
こうした状況下で、特定技能を持つ外国人の登用を考えている雇用主は多く、外国人労働者のニーズが高まっている状況です。
しかしニーズが高まる一方で、スムーズな受け入れができない状況にもどかしさを感じている方も多いのではないでしょうか。
どのような形で外国人労働者を介護現場に迎え入れるべきか。
こちらでは雇用主の視点から、特定技能において「介護」の資格を持つ外国人の人材確保について、必要となる情報をポイントを押さえて紹介していきます。
▼特定技能とは何か
まず特定技能についてですが、これは2019年に開始された制度で、外国人が日本に在留するための資格です。
特定技能により本国に在留するためには、在留目的等を地方入国在留管理官署に申請し、在留資格を認定される必要があります。
2021年4月現在、特定産業分野に属する相当程度の知識又は経験を必要とする技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格である「特定技能1号」として、「介護」を含む以下の14分野が指定されています。
①介護 ②ビルクリーニング ③素形材産業 ④産業機械製造業 ⑤電気・電子情報関連産業 ⑥建設 ⑦造船・舶用工業
⑧自動車整備 ⑨航空 ⑩宿泊 ⑪農業 ⑫漁業 ⑬飲食料品製造業 ⑭外食業
上記の産業にかかわる事業者は、特定技能を満たす外国人労働者を一定条件のもと、受け入れることができます。
一定条件とは、特定分野に関する技能水準を確認する試験と、生活や業務上必要な日本語能力を確認するための試験の合格者であるというものです。
また特定技能で在留できる期間は最長で5年まで、かつ1年、6か月または4か月ごとに更新が必要となります。
▼特定技能 介護について
次に特定技能の「介護」分野における基本方針・分野別運用方針・主務省令などを紹介していきます。
介護分野は、厚労省の管轄にあり、2019年から5年間で最大6万人の受け入れが見込まれています。
▼特定技能「介護」の資格取得
特定技能「介護」においてもほかの産業分野と同様に技能試験と日本語試験があります。
介護の場合、技能試験である「介護技能評価試験」、日本語試験である「日本語能力判定テスト」「介護日本語評価試験」の2種類が設定されています。
在留を希望する外国人はこれらを受験し、合格する必要があります。
ただし、以下の要件に当てはまる場合、試験は免除されます。
- 介護分野の第2号技能実習を修了した
- 介護福祉士養成施設を修了している
- EPA介護福祉士候補者としての在留期間満了(4年間)
-試験について
2つの試験の概要は以下の通りです。
「介護技能評価試験」は、制限時間が60分で全部で45問が出題されます。
45問のうち、筆記となる学科試験が40問、実技試験が5問という内訳です。
出題項目は「介護の基本」から10問、「こころとからだのしくみ」から6問、「コミュニケーション技術」から4問、「生活支援技術」から20問が出題されます。
一方「介護日本語評価試験」は全15問の出題で制限時間は30分です。
出題項目は「介護のことば」「介護の会話・声かけ」「介護の文章」から5問ずつです。
介護技能評価試験・介護日本語評価試験に対応する学習用テキストが厚労省のサイトから見られるので、試験対策に利用することができます。
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_000117702.html
それぞれの試験で受験手数料が1000円程度かかります。
合格基準は問題の総得点の60%以上です。
-申請必要書類
試験の概要や申請に必要な書類等は以下のページで確認できます。
http://ac.prometric-jp.com/testlist/nc/nursingcare_japan.html
-試験実施要項
試験の詳しい実施要項はこちらで確認できます。
「介護技能評価試験」
https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/000617575.pdf
「介護日本語評価試験」
https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/000617576.pdf
▼特定技能「介護」の仕事と報酬、資格等について
-主な仕事内容と技術的要件
厚労省の方針として、介護の従事者には身体介護等(利用者の心身の状況に応じた入浴、食事、排せつの介助等)のほか、これに付随する支援業務(レクリエーションの実施、機能訓練の補助等)の技能を有していることが求められています。
ちなみに介護事業のうち、訪問系サービス※は特定技能資格者受け入れの対象外となるためご注意ください。
※訪問系サービスについては、介護福祉士資格取得者となり、かつ一定条件を満たした事業所に勤務している場合であれば就労可能となります。
-報酬
報酬については、日本人と同等以上と定められています。
在留資格者と直接雇用契約を結び、契約に基づいて履行される必要があります。
-資格
在留資格「特定技能」で入国している外国人の介護職員は「介護福祉士」の資格を保有しているわけではありません。
ですが受け入れ後に実務要件を満たした後に試験を受け、介護福祉士の資格を取得することは可能です。
介護福祉士の資格を取れば、在留資格「介護」を選択できるため、特定技能による在留期間の上限である5年までではなく、「永続的」な就労が可能となります。
逆に言えば、資格を取得しなければ在留期間内での帰国を余儀なくされるため、雇用主に継続的な雇い入れの意思があったとしてもその希望が叶うことはありません。
▼特定技能「介護」での受け入れを目指す企業の条件
特定技能の資格取得者を受け入れる際は、以下の条件を満たしている必要があります。
- 労働、社会保険、租税関係法令している
- 1年以内に特定技能外国人と同種の業務に従事する労働者を非自発的に離職させていない
- 5年以内に出入国・労働法令違反がない
加えて以下義務付けられています。
- 雇用契約の締結とその契約内容の確実な履行
- 「特定技能外国人支援計画」の策定、支援の実行
- 出入国在留管理庁への各種届出
- 厚労省が組織する協議会に参加し、必要な協力を行うこと
- 厚労省が行う調査又は指導に対し、必要な協力を行うこと
特定技能を有する外国人に対する支援とは、具体的に以下のようなことを差します。
- 外国人に対する入国前のガイダンスを母国語かそれに準ずる言語で行う
- 入国時の空港への出迎えと帰国時の見送り
- 保証人となる(住宅確保のための支援)
- 在留中に生活オリエンテーションを行う(銀行口座の開設、携帯電話の契約など含む)
- 生活に必要な日本語習得支援
- 相談や苦情への対応
- 各種行政手続きに関する情報提供と支援
- 日本人との交流支援
- 外国人に非がない際の契約解除後に、在留資格に基づく活動ができるようにするための支援(転職支援)
また「介護」分野では、事業所ごとに特定技能資格者の受け入れ可能人数が決められています。
というのも介護分野の特徴として、都道府県、地域ごとに人材不足の状況が大きく異なるためです。
希望する受け入れ人数よりも少ない枠しか設定されていない場合がある点は、受け入れ前に認識しておくべきでしょう。
基本方針、分野別の運用方針、省令などを詳しく知りたい方は、こちらの資料を参照してください。
『在留資格「特定技能」について』令和元年7月 出入国在留管理庁
https://www.meti.go.jp/press/2019/08/20190809002/20190809002-1.pdf
▼まとめ
ここまで在留資格における「特定技能」介護分野について、制度概要と雇い入れの際に必要な条件などを紹介しました。
特定技能で入国する外国人の受け入れには、準備すべきことが数多くあり、早めに受け入れ態勢を整えておく必要があります。
もし介護分野で外国人の雇用を目指す事業者の方は、早めに詳細を確認し、受け入れのための準備を整えみてはいかがでしょうか。