株式会社トリドールホールディングス様

2021年07月15日

2020年12月から特定技能社員の採用を始められた株式会社トリドールホールディングスの前辻あゆ美様に、特定技能を活用した人材戦略に関してインタビューを行いました。

<特定技能に取り組もうと考えた背景を教えてください。>

前辻氏(以下敬称略):以前からどんな国籍の方も関係なく働ける環境を作りたいと考えていました。丸亀製麵は外国籍アルバイトの採用数が本当に多くて、国籍関係なくチャンスを与えたいという考えがあり、特定技能というビザが出て取り組んでみようという議論になったという流れです。

会社としてもダイバーシティは重要視している価値観です。新卒や若年層の採用が拡大する中で、年齢的なダイバーシティは広がってきていましたが、国籍という点ではまだまだでした。店舗に目を向けると様々な方々が働いており、多様性は実現していて、正社員としても多様性を考慮していこうという議論になりました。またグループとして、海外展開を行っていく中で、特定技能を通じ日本で育ち、海外の店舗で働ける流れをつくれば、グローバルな企業としてもいい流れになると考えています。

<コロナ禍にも関わらず特定技能のプロジェクトを推進した理由はなぜでしょう?>

前辻氏:コロナ前から特定技能の議論は行ってきました。経営陣と話をしたときに、人材は今後ずっと続くものであり、未来に向けた先行投資として行いましょうという意思決定でした。また会社のカルチャー的にも新しいことには一度取り組んでみようという文化があります。コロナはいつか終わるだろうし、足元の話を一旦離れ、トリドールが大切にしている価値観と照らし合わせ必要かどうかで判断を行っています。海外に拠点をおいていくところも見据えて判断しており、本場の日本でうどんやお客様への思いを学ぶ人材を育成したいとの考えもあります。

<特定技能を初めて、良かったところと難しいところは何でしょうか?>

前辻氏:良かったところは、仕事場でいつも楽しそうに働いてくれている点です。タイさん(特定技能で採用されたベトナム国籍のスタッフ)のその姿を見れることが本当に嬉しいです。また丸亀製麵の中でも、外国籍の特定技能スタッフを受け入れてくれる店舗が少しずつ増えてきています。特定技能の社員がアルバイトスタッフの教育など、ダイバーシティの起点になることもでき、ロールモデルが輩出できる取り組みが進められているのは良かった点だと考えています。

難しい点としては、特定技能の社員登用を初めてまだ間もない中で、ゲストの扱いになってしまうことを防ぐ必要はあると考えています。社内全体で外国籍の社員がいるのが普通になっていく空気感を作っていくため、外国籍社員登用を行っている認知度を社内全体で進めていく必要があります。アルバイトは受け入れるノウハウが蓄積されてきていますが、特定技能も会社にとってメリットがあるという社内プロモーションが非常に大切です。この認識が広まると外国籍アルバイトを特定技能として推薦の声が、店舗から上がってくるようにもなってくると考えています。認知度を高めるために様々な施策は行っており、例えば社内SNSでインタビューの発信など取り組みを行っている。将来的には会議での発言や表彰される機会をつくっていきたいですし、ここは本人だけでなく、人事部としてどうプロモーションをしていくかという点になっています。

<受け入れる際のコストついてはどう考えていますか?>

前辻氏:目に見えて追加のコストが多いように見えるが、トータル5年考えると元々アルバイトを行ってきた人材であり、能力は元から備わっている点は考慮しています。また最終的に海外で活躍できる人材になり得るという意味もあって、特定技能をやらないという選択にはなりませんでした。一方、特定技能の候補者を受け入れる際、海外から人材を連れてくることにはハードルがいくつかあった中で現在在籍しているアルバイトスタッフを特定技能の社員として登用するという仕組みを採用したことで、会社へのフィット、能力、費用など多面的な理由でよかったと考えています。

同じレベルの中途採用と比較してもアルバイト経験があるアドバンテージがあります。例えば、日本人の中途採用でも、未経験者の紹介料、大卒採用でもかなりの費用がかかっています。そう考えると、今回採用したタイさんは、アルバイト勤務経験者であり若年層のプロパー人材として採用できたことは非常に良かったです。社員は入社後に、通常3か月程度の研修がありますが、タイさんは丸亀製麵が好きでアルバイト勤務をしており、特定技能で入社したその日からオペレーション全体ができるので、教育費用も抑えることも出来ています。5年間の勤務期間についても、オペレーション習得期間を短縮できるため、早期から店舗運営や外国人アルバイト育成、麺職人制度(当社独自の製麺プロフェッショナル輩出プログラム)などの業務に着手することができます。正社員は最低レベルとして店長業務を求めているため、特定技能で採用したタイさん自身の付加価値を店長と同等レベルまで高めていく必要あると思っています。お金の面では、月々コスト等の負担はありますが、付加価値を考えてみると違った見え方になります。

<特定技能の採用ペースはどう考えていますか?>

前辻氏:一旦年間10人程度の採用を特定技能について考えています。最終的には海外のプロジェクト等に関わってほしいと考えており、人材の質にはこだわります。5年間ただ業務をするだけでなく、質の高い時間を提供したいと考えています。新卒採用を行ったときに、一時年間300人弱程度採用していたことがありました。しかし新卒の採用を始めて、5-6年という期間しか過ぎていない中での挑戦だったため、若年層の育成、キャリアアップやロールモデルのノウハウを蓄積している最中で、離職が少し膨らんでいた時期がありました。その経験も踏まえて、特定技能のプロジェクトは、毎日店舗運営をしているだけで終わらないようにしようという意識を持っています。

<今後特定技能に取り組む企業の皆様へ一言あればお願いします。>

前辻氏:Laboro様がいたので特定技能社員登用に果敢に取り組むことができました。まだ特定技能はできたばかりの制度でもあり、判断の幅がある部分もあるため、入国管理局、企業、候補者、支援企業の正方形がうまく回っていくようコミュニケーションをとりながら、良い実績を作っていくことが重要だと感じています。丸亀製麵の特定技能の方の受け入れも、日本で既に働いているアルバイトの人材を生かすという珍しいケースになっていたので、より関係者間のコミュニケーションが重要になっていましたが、丸亀製麵の挑戦を大切にしているスタンスと、Laboro様のチャレンジへのスタンスはうまく組み合わさっていると思います。これがモデルになり、御社とつながる企業が増えていけばと感じています。