外食産業が特定技能で外国人を雇用するときの注意点5つを制度概要など交え解説
2021年08月12日
現在はコロナ禍で苦境にあえぐ外食産業ですが、快方に向かえばまた人出が増え忙しくなり、人手も必要となるでしょう。
深刻な人手不足を解消するために2019年4月から制度化されたのが、在留資格「特定技能」で、外食産業も外国から人材を幅広く受け入れやすくなりました。
そこで今回、外食産業を支える国内企業や店舗が外国人を特定技能で雇用するときに気を付けるべきこと5つなどをお伝えしていきます。
在留資格「特定技能」制度の概要と外食産業
詳細は後述しますが、外国人雇用もまた日本人雇用と同様に法律がついてまわります。
「特定技能」は、出入国管理及び難民認定法で定められている制度のひとつです。
ついては業種、区分、在留期間なども決まっていますので、JITCOのサイトを参考にし、ご紹介していきます。
特定技能の業種
特定技能は前述したように人材確保を目的に創設された在留資格であり現状、
介護/ビルクリーニング/建設/造船・舶用工業/宿泊/農業/外食業
などの14業種で認められており、企業などは上記業種にかぎり、外国から人材を特定技能で招へい、入国させることができます。
特定技能の区分
特定技能の区分は1号と2号の2つがあり
- 1号…知識・経験を要する技能で業務ができる方 在留期間は1年(通算上限5年)
- 2号…熟練した技能で業務ができる方 在留期間は3年
です。ただし2号は現状、建設と造船・舶用工業に限定されています。
そのため外食産業では特定技能1号で人材を受け入れることになります。
1号の更新は6カ月または4カ月ごとの短期となっていますので年2、3回の出入国在留管理庁への手続きが必須です。
特定技能関係機関
特定技能制度では
- 受入れ機関
- 登録支援機関
の2つが関わっています。
受入れ機関とは端的にいえば外国人材を雇おうとする企業や店舗のことです。
もちろん飲食店も該当します。
登録支援機関は受入れ機関から委託を受け、わかりやすくいえば外国人の仕事や生活がうまくいくように支援します。
両者ともに
- 適切な支援の実施
- 出入国在留管理庁への各種届出
をしなければなりません。
各種届出のなかには前項の更新手続きも含みます。
特定技能の実態
2020年12月末現在の出入国在留管理庁公表資料によると特定技能で来日しているのは15663人、国籍別でみるとベトナムが9412人と多勢を占めます。
そして中国、インドネシア、フィリピンと追随します。
つまりアジア諸国から多くの人材が特定技能で日本に入り、働きに来ているということです。
産業別にみると飲食料品製造が最多で4割弱。農業、建設と続きます。
介護については意外にも全体の6%と少なく、その次に少なかったのが外食業の6.4%ですが、コロナ禍に関わらず全国で998人もの方が従事しています。
そのため今後の状況次第では従事者が増えていく可能性が高く、伸びしろがあります。
なぜ外国から日本外食産業を目指す人がいるのか?
直接、当事者に聞いたわけではありませんのであくまでも考察となりますが、ここ近年、日本食が世界的に流行、注目されてきたことが要因といえるでしょう。
コロナ前、人気飲食店には必ず外国人旅行者が多く立ち並ぶ行列ができていましたし、帰国時はおみやげに大量のカップ麺を持ち帰るのが通例となっているようでした。
おいしさやクオリティの高さが支持されていたのでしょう。
また農林水産省公表値によると世界各地の日本食レストラン数の推移は
- 2006年 約24000店
- 2013年 約55000店
- 2019年 約156000店
でわずか13年ほどで6.5倍の伸びとなっています。
また2019年の在アジア日本食レストランは101000店と世界の3分の2ほどを占めていますので、日本の飲食店で学び、その経験をもっていずれは自分自身も祖国の日本食レストランでいいポジションに就こう、もしくは出店しよう。そう考えて家族と離れ日本での特定技能を希望したアジア諸国の人も少なくないはずです。
国公表、外食産業で働く特定技能の労働事例
2021年4月現在、農林水産省はサイトで、
- 仕出し弁当業者
- 日本料理店(すきやき、鉄板焼き専門店)
- 中華料理店
- 外食総合事業者(牛丼店等)
の4事例を公表しており、参考になりますのでぜひ一読いただけますと幸いです。
特定技能で人を雇うとき、何に注意すればいいか?
法律を守る
法治国家、日本では国籍に関わらず雇用される人には労働法が適用されます。
報酬額は日本人と同等それ以上、所定労働時間、有給休暇なども同じ取り扱いとしなければなりません。
外国人を安価な労働力ととらえ、勝手な振る舞いをすることは認められていません。
コミュニケーション
今、日本人どうしの人間関係でも『〇〇ハラ』と、あらゆるハラスメントが社会問題として提起され続けています。
ましてや言葉の壁がある外国人に対しては通常よりも増して、その言動に注意しなければなりません。
過去に総務、人事に対し別の社員からハラスメントの加害者として通報があった人を遠ざけるのはもちろん、カンタンな日本語で教えられる、身振り手振りでジェスチャーできる、アンガーマネジメントを普段から取り入れているようないわゆる“できた人”を教育係に据えるなどの配慮が必要です。
文化の違い
例えばベトナムでは麺をすすって食べるのはよくないとされています。
そのため「郷に入りては…」との理由にかこつけて強要するのは、その人材の祖国の文化を尊重しない悪しき行為の類となりますので気を付けたほうがいいです。
雇用しようとする人材の祖国の宗教、マナー、習慣、食事といった文化を知り、当事者の心を傷つけようとしていないか一度、立ち止まり慮るべきです。
試験対策
「働きに来ている」と述べましたが、厳密にいえば「学びにも来ている」のが特定技能で入国した彼らです。働きながら日本語はもちろん
- 衛生管理
- 飲食物調理
- 接客
を学び、日本で実施される特定技能試験に合格しなければなりません。
学科と実技がありますので教える側が出題範囲をよく理解し、業務中に学べる環境を与えるべきです。
それができる人を教育係にする、支援計画を綿密に立てる必要もあります。
生活面
プライバシーに配慮しつつ無知なばかりに日本での契約行為で騙されたり、不利を強いられたりしていないか。
よからぬ人たちと付き合い、トラブルや犯罪に巻き込まれていないかなど、普段からのコミュニケーションを通じ、悩みを聞き出せるような間柄になっておきたいものです。
こういった不断の努力を怠ると、長期間準備をして選考し、ようやく受け入れた人材から入国間もなく「辞めたい」「帰国したい」という言葉が出てきたり、姿をくらまされのちに不法滞在(オーバーステイ)などとして見つかったりするなど、ともに望まぬ結果を招きかねません。
まとめ
外食産業が特定技能で外国人を雇用するときは特に、
- 法律
- コミュニケーション
- 文化
- 試験
- 生活
の5つの側面に気を付けるべきです。
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