特定技能外国人材を雇用するメリットデメリットは?技能実習との違いも解説

2021年08月20日

日本では、近年各産業における労働力不足が顕著になってきています。
そこで活躍するのが、在留資格「特定技能」を持った外国人人材です。
最近では、政府も外国人人材確保のために様々な法律を制定し始めている現状があり、多くの企業が外国人人材を確保するべく動き始めています。

そこで本記事では、在留資格「特定技能」を持った外国人を採用するメリットやデメリットを詳しくみていきたいと思います。

 

在留資格「特定技能」とは?

在留資格「特定技能」とは、冒頭でも少し触れた通り、中小企業をはじめとした深刻な人材不足に対応すべく、ある程度の専門性や知識、技能を有した外国人を受け入れていく動き、制度のことです。

在留資格「特定技能」に係る制度は、2018年12月の臨時国会において、在留資格「特定技能」の新設を柱とする「出入国管理及び難民認定法及び法務省設置法の一部を改正する法律」が可決・成立し、2019年4月1日より人手不足が深刻な産業分野において、「特定技能」での新たな外国人材の受入れが可能となりました。

参考:公益財団法人 国際人材協力機構 在留資格「特定技能」とは

 

特定技能制度の概要

在留資格「特定技能」は大きく分けると主に2つに分類されます。
1つ目が「特定技能1号」、2つ目は「特定技能2号」です。
以下でそれぞれについて詳しく解説していきます。

(※以下で記載されている特定産業分野とは、介護、ビルクリーニング、素形材産業、産業機械製造業、電気・電子情報関連産業、建設、造船・舶用工業、自動車整備、航空、宿泊、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業の14分野を指します)

 

特定技能1号

特定技能1号は、特定産業分野に属する相当程度の知識又は経験を必要とする技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格です。
以下、特定技能1号の簡単な概要です。

  • 在留期間:1年,6か月又は4か月ごとの更新,通算で上限5年まで
  • 技能水準:試験等で確認(技能実習2号を修了した外国人は試験等免除)
  • 日本語能力水準:生活や業務に必要な日本語能力を試験等で確認(技能実習2号を修了した外国人は試験等免除)
  • 家族の帯同:基本的に認めない
  • 受入れ機関又は登録支援機関による支援の対象

引用:法務省入国管理庁「新たな外国人人材の受け入れについて」

 

特定技能2号

特定技能2号は、特定産業分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格のことです。
ここで注意しておきたいのが、特定技能2号の場合は建設、造船・舶用工業の2分野のみ受入れ可であるという点です。
以下、特定技能2号の簡単な概要になります。 

  • 在留期間:3年,1年又は6か月ごとの更新
  • 技能水準:試験等で確認
  • 日本語能力水準: 試験等での確認は不要
  • 家族の帯同:要件を満たせば可能(配偶者,子)
  • 受入れ機関又は登録支援機関による支援の対象外

引用:法務省入国管理庁「新たな外国人人材の受け入れについて」

 

在留資格「技能実習」とは?

在留資格「特定技能」とよく間違えられる制度として、在留資格「技能実習」が挙げられます。
技能実習制度の目的・趣旨は、我が国で培われた技能、技術又は知識の開発途上地域等への移転を図り、当該開発途上地域等の経済発展を担う「人づくり」に寄与するという、国際協力の推進にあります。
技能実習制度の内容は、外国人の技能実習生が、日本において企業や個人事業主等の実習実施者と雇用関係を結び、出身国において修得が困難な技能等の修得・習熟・熟達を図るものです。
以下で「特定技能」と「技能実習」それぞれの制度の違いについてみていきましょう。

 

特定技能と技能実習の違いは?

在留資格「特定技能」と在留資格「技能実習」の違いについて、制度の目的、滞在年数、就労可能な業種、家族帯同の有無、入国時の試験の有無、受け入れ人数の上限、活動内容、転職や転籍の可否の観点から比較していきます。

 

在留資格「特定技能」の特徴

【制度の目的】
日本における人材不足の解消を目的とする

【滞在年数】

  • 特定技能1号 … 5年
  • 特定技能2号 … 3年で更新可で実質無期限

【就労可能な業種】

  • 特定技能1号 … 介護、ビルクリーニング、素形材産業、産業機械製造業、電気・電子情報関連産業、建設、造船・舶用工業、自動車整備、航空、宿泊、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業
  • 特定技能2号 … 建設、造船・舶用工業

【家族帯同の有無】

  • 特定技能1号 … 不可
  • 特定技能2号 … 可能

【入国時の試験の有無】

  • 特定技能評価試験
  • 日本語評価試験

【受け入れ人数の上限】
企業ごとの受け入れ制限は特になし

【活動内容】
相当程度の知識または経験を必要とする技能を要する業務に従事する活動

【転職や転籍の可否】
同じ業界内の転職は可能

参考:公益財団法人 国際人材協力機構 外国人技能実習制度とは

 

在留資格「技能実習」の特徴

【制度の目的】
日本における技術や技能を開発途上国へ伝える目的

【滞在年数】

  • 技能実習1号 … 1年以内
  • 技能実習2号 … 2年以内
  • 技能実習3号 … 2年以内、最長5年まで

【就労可能な業種】

  • 技能実習1号 … 特に制限なし
  • 技能実習2号・3号 … 漁船漁業、養殖業、さく井、建築板金、冷凍空気調和機器施工、建具制作、建築大工、型枠施工、鉄筋施工、とび、石材施工、タイル張り、かわらぶき、左官、配管、熱絶縁施工、内装仕上げ施工、サッシ施工、防水施工、コンクリート圧送施工、ウェルポイント施工、表装、建設機械施工、築炉、缶詰巻締、食鳥処理加工業、加熱性水産加工食品製造業、非加熱性水産加工食品製造業、水産練り製品製造、牛豚食肉処理加工業、ハム・ソーセージ・ベーコン製造、パン製造、惣菜製造業、農残物漬物製造業、医療・福祉施設給食製造、紡績運転、織布運転、染色、ニット製品製造、たて編ニット生地製造、婦人子供服製造、紳士服製造、下着類製造、寝具制作、カーペット製造、帆布製品製造、布はく縫製、座席シート縫製、鋳造、鍛造、ダイカスト、機械加工、金属プレス加工、鉄工、工場板金、めっき、アルミニウム陽極酸化処理、仕上げ、機械検査、機械保全、電子機器組み立て、電気機器機組み立て、プリント配線板製造、家具製作、印刷、製本、プラスチック成形、強化プラスチック成形、塗装、溶接、工業包装、紙器・段ボール箱製造、陶磁器工業製品製造、自動車整備、ビルクリーニング、介護、リネンサプライ、コンクリート製品製造、宿泊、RPF製造、鉄道施設保守整備、ゴム製品製造、空港グランドハンドリング

【家族帯同の有無】

  • 技能実習1号 … 不可
  • 技能実習2号 … 不可
  • 技能実習3号 … 不可

【入国時の試験の有無】
介護職種のみN4レベルの日本語能力要件があるが、それ以外の職種では必要なし

【受け入れ人数の上限】
企業の規模によって制限あり

【活動内容】

  • 技能実習1号 … 技能実習計画に沿った講習を受け、業務に従事
  • 技能実習2号・3号 … 技能実習計画に沿って技能を要する業務への従事

【転職や転籍の可否】
原則として不可ではあるが、実習先企業の都合等により実習を続けられない場合は可能

参考:公益財団法人 国際人材協力機構 外国人技能実習制度とは

 

特定技能外国人材を雇用するメリットとデメリットは?

次に、特定技能外国人人材を採用するメリットやデメリットについて見ていきましょう。

 

特定技能外国人を雇用するメリット7つ

特定技能外国人人材を雇用するメリットは以下の7つが挙げられます。

  • 労働力不足が解消される
  • 在留資格を取得すれば即入国可能
  • 技能実習から引き続き労働が可能
  • フルタイムでの雇用が可能
  • 日本語を用いたコミュニケーションを取ることができる
  • あらかじめ知識を有する優秀な人材を雇用できる
  • 特定技能2号に関しては雇用期限が実質無期限

以下でそれぞれのメリットについて詳しく見ていきましょう。

 

労働力不足が解消される

まず一つ目に、労働力不足の解消がメリットとして挙げられます。
特定技能に合格した外国人人材は、特定技能を取得する時点で「特定技能評価試験」と「日本語評価試験」という試験に合格する必要があります。
なので、普通に何も知識やノウハウなどのない日本人人材を採用するよりも効率的に教育を行うことが可能であり、人材不足が進む業界でもそうでない業界(※ただし指定の業界内のみ)でも、十二分に活躍することが可能です。

 

在留資格を取得すれば即入国可能

技能実習の場合、入国の許可が下りるまでに半年かそれ以上かかる場合がほとんどです。
しかし、特定技能を取得した場合、試験に合格した時点で入国が可能になります。
特定技能人材に対する教育支援の策定や環境が整い次第の入国・雇用が可能ですので、すぐに雇用して即戦力として働いてもらうことが可能です。

 

技能実習から引き続き労働が可能

技能実習生として働いた後に、その技能実習生の技能や知識、態度等が良好であると判断された場合、特定技能に移行できる可能性があります。
この際、特定技能評価試験と日本語評価試験の受験は免除されます。
基本的に、特定技能は技能実習生からの切り替えが主流です。
在留期間に関して、技能実習生として働いていた期間はカウントされませんので、技能実習性として働いた期間 + 5年が実際の滞在期間になり、日本で長く働いてもらうことが可能になります。

 

フルタイムでの雇用が可能

実は、外国人をアルバイトとして雇用する際は週28時間しか労働できないと言う規定があり、実質的な労働力不足解消となかなかいかないのが現状です。
しかし、特定技能の場合はフルタイムでの労働が可能になるので、労働力不足の解消に大きく貢献することは間違いないでしょう。

 

日本語を用いたコミュニケーションを取ることができる

特定技能を取得した外国人人材は、「日本語評価試験」という日本語能力を問う試験に合格しているか、N2以上の日本語能力を持っています(※技能実習生として働いた後、特定技能評価試験と日本語評価試験の受験は免除されることがあります)。
そのため、日常生活や業務上における日本語を用いたコミュニケーションも可能であるというメリットがあります。
技能実習生からの切り替えの場合、それほど高い日本語能力を有しているわけではありませんが、簡単かつ基本的なコミュニケーションであれば、さほど問題なく取ることができるでしょう。

 

あらかじめ知識を有する優秀な人材を雇用できる

特定技能の場合、あらかじめ知識を有する優秀な人材を雇用することが可能なので、教育の手間を省くことができると言うメリットがあります。
特定技能外国人を雇用する際は、その外国人にあった教育支援計画の策定やその他生活面における援助や支援、オリエンテーション等を行う必要がありますが、自社内にそう言ったリソースがない場合などには「登録支援機関」などの支援機関に業務委託するのも一つの手でしょう。

↓ 登録支援機関についての記事はこちらから ↓

特定技能における「登録支援機関」とは?申請方法や選び方など徹底解説

 

特定技能2号に関しては雇用期限が実質無期限

特定技能2号の場合、3年ごとに在留資格の更新があり、それを更新し続けることで実質無期限での雇用が可能です。
在留期間が設けられていないこともあり、日本で長く働き続けてもらうことが可能になります。

 

特定技能外国人を雇用するデメリット3つ

次に、特定技能外国人を雇用するデメリットについて見ていきましょう。
主に特定技能外国人を雇用するデメリットは以下の3つが挙げられます。

  • 申請等手続きが煩雑
  • 技能実習生より初期費用が高額になりがち
  • 特定技能1号は最長5年までの就労

それぞれについて詳しく見ていきましょう。

 

申請等手続きが煩雑

まず一つ目のデメリットとして、申請等の手続きが煩雑であるという点が挙げられます。
実際、この手続きが大変なことが理由で外国人人材を雇用することを諦めてしまう経営者がいるのも事実です。
そう言った場合は、先ほども少し述べた「登録支援機関」に業務委託し、手続きの多くを任せてしまうのも一つの手でしょう。
法務省のホームページでも、“登録支援機関は,受入れ機関との支援委託契約により,1号特定技能外国人支援計画に基づく支援の全部の実施を行う”と登録支援機関について説明されています。
登録支援機関をうまく活用し、自社内の業務を効率化してみるのも良いでしょう。

参考:法務省入国管理局「新たな外国人材の受け入れについて」

 

技能実習生より初期費用が高額になりがち

二つ目のデメリットとして、技能実習生よりも初期費用が高額になりがちであると言うデメリットがあります。
基本的に、特定技能外国人人材を紹介してもらう際、年収の20~30%が手数料の相場です。
基本的にその外国人人材の国籍や機関によっても費用はガラリと変わってきますが、外国人人材1人あたり50万円あたりが相場と言われています。

 

特定技能1号は最長5年までの就労

三つ目のデメリットとして、特定技能1号は最長5年までの就労しか認められていません。
特定技能2号であれば、在留期間が特に設けられていませんので、実質無期限で就労が可能です。
特定技能1号の場合、技能実習制度をうまく活用、組み合わせていくことで就労期間を実質延長させることが可能です。

 

在留資格「特定技能」に関してよくある質問5つ

最後に、在留資格「特定技能」に関してよくある質問を5つ、法務省のホームページから抜粋してご紹介していきます。

 

Q1. 受入れ機関が実施しなければならない支援は?

外国人と日本人との交流の促進に関する支援、外国人の責めに帰すべき事由によらない契約解除時の転職支援のほか、特定技能雇用契約の内容に関する情報の提供、外国人が出入国しようとする空海港への送迎、適切な住居の確保に係る支援等です。
詳細は、法務省ホームページにおいて公表している「1号特定技能外国人支援計画の基準について」に記載されています。

 

Q2. 申請書や申請書に必要な書類はどこで確認できる?

申請に必要な書類や記載例は,法務省ホームページで公開されています。

 

Q3. 「特定技能」の在留資格から,永住許可は認められる?

「特定技能1号」の在留資格で日本にいる期間は、最長5年です。
そのため、「永住者」の在留資格へ変更することは難しいことを理解しておきましょう。

 

Q4. 「特定技能2号」はどのような在留資格?

「特定技能2号」は、熟練した技能を持つ外国人向けの在留資格であり、「特定技能1号」より高い技能を持つことが必要です。
試験等によって、相当程度の技能や知識があるかどうかが確認されます。
「特定技能1号」を経れば自動的に「特定技能2号」に移行できるわけではありません。
他方で、高い技能を持っており、試験等によりそれが確認されれば、「特定技能1号」を経なくても「特定技能2号」の在留資格を取得することができます。

 

Q5. 特定技能外国人を受け入れるために必要な要件は?

以下の法務省ホームページにおいて公表している特定技能外国人受入れに関する運用要領や制度説明資料に記載されています。

参考:特定技能外国人受入れに関する運用要領
参考:特定技能制度に関するQ&A - 法務省

 

特定技能外国人を採用して業務の効率化を図ろう

本記事では、特定技能外国人を採用するメリットやデメリット、技能実習と特定技能の違いについて見てきました。
特定技能外国人人材を雇用するには、様々な煩雑な手続きを減る必要があったり、技能実習生よりも費用がかかったりとデメリットはあります。
しかし、始めから優秀な人材の確保が可能であったり、在留資格の種類によっては実質無期限での雇用が可能であったりと、メリットも非常にたくさんあります。
また、煩雑な手続きを自社内で行うリソースがない場合、「登録支援機関」という支援機関に業務委託を行うことで、面倒な工程をカットし、さらに教育や生活面での支援等を行うことも可能です。
ぜひこの機会に、自社内の労働力確保のために外国人人材を雇用し、業務の効率化を図ってみてはいかがでしょうか。