特定技能と技能実習を徹底比較 |メリットとデメリットを考える

2021年08月12日

外国人採用に携わるのであれば、就労に必要な在留資格の違いを把握していなければなりません。

「特定技能」と「技能実習」は一見して似ていますが、内容は大幅に異なります。

今回の記事では「特定技能」と「技能実習」を比較し、メリットとデメリットについて解説していきます。

 

労働力不足が加速する日本

https://unsplash.com/photos/IocJwyqRv3M

 

日本では急速に少子高齢化が進んでおり、人口減とともに生産年齢人口比率も減少しているため、労働力不足がさらに加速すると見られています。

日本国内での人材獲得は年々難しくなっており、多くの採用担当者が頭を悩ませていることでしょう。

 

深刻な労働力不足は多くの産業に及んでおり、日本の国力低下が懸念されています。

こうした危機を回避するため、日本政府は外国人労働者の受け入れを拡大させる方向に舵を切りました。

出典:2050年までの経済社会の構造変化と政策課題について「経済産業省」

https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/2050_keizai/pdf/001_04_00.pdf

 

特定技能とはどのような制度?

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2019年4月に新設された「特定技能」の在留資格は、それまで禁止されていた単純労働における外国人の就労を認める制度です。

「特定技能」で就労可能な業種は「特定産業分野」として指定を受けた14業種のみとなります。

 

特定産業分野とは?

“生産性向上や国内人材確保のための取組を行ってもなお人材を確保することが困難な状況にある産業上の分野”

出典:特定技能外国人受入れに関する運用要領「出入国在留管理庁」

http://www.moj.go.jp/content/001315380.pdf

 

特定14業種

介護、ビルクリーニング、素形材産業、産業機械製造業、電気・電子情報関連産業、建設業、造船・舶用業、自動車整備業、航空業、宿泊業、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業

 

特定技能と技能実習は何が違う?

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「特定技能」と「技能実習」は、どちらも外国人労働者が日本国内で就労するために得る在留資格です。

ここではそれぞれの違いを見ていきましょう。

 

受け入れ国

「特定技能」では一部の例外はあるものの、基本的にはどの国からでも受け入れ可能です。

対して「技能実習」は国家間での取り決めが必要で、2021年5月時点で以下の14ヶ国との間で協力覚書が作成されています。

  • ベトナム
  • カンボジア
  • インド
  • フィリピン
  • ラオス
  • モンゴル
  • バングラデシュ
  • スリランカ
  • ミャンマー
  • ブータン
  • ウズベキスタン
  • パキスタン
  • タイ
  • インドネシア

出典:技能実習に関する二国間取決め(協力覚書)「厚生労働省」

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000180648.html

 

「特定技能」と「技能実習」の制度比較

 

特定技能(1号)

技能実習

目的

「特定産業分野」に指定されている14業種において、労働力不足を補うのが目的

「国際協力の推進」を理念に掲げ、「発展途上国への技能移転」が目的

関係法令

出入国管理及び難民認定法

外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する 法律/出入国管理及び難民認定法

在留資格

在留資格「特定技能」

在留資格「技能実習」

在留期間

通算5年

技能実習1号:1年以内

技能実習2号:2年以内

技能実習3号:2年以内(合計で最長5年) 

外国人の技能水準

相当程度の知識又は経験が必要

なし

入国時の試験

技能水準、日本語能力水準を試験等で確認(技能実習2号を良好に修了した者は試験等免除)

なし(介護職種のみ入国時N4レベルの日本語能力要件あり)

送出機関

なし

外国政府の推薦又は認定を受けた機関

監理団体

なし

あり(非営利の事業協同組合等が実習実施者への監査その他の監理事 業を行う。主務大臣による許可制)

支援機関

あり(個人又は団体が受入れ機関からの委託を受けて特定技能外国人に住居 の確保その他の支援を行う。出入国在留管理庁による登録制)

なし

外国人と受入れ機 関のマッチング

受入れ機関が直接海外で採用活動を行い又は国内外のあっせん機関等を 通じて採用することが可能

通常監理団体と送出機関を通して行われる

受入れ機関の 人数枠

人数枠なし(介護分野、建設分野を除く)

常勤職員の総数に応じた人数枠あり

活動内容

相当程度の知識又は経験を必要とする技能を要する業務に従事する活動(専門的・技術的分野)

技能実習計画に基づいて、講習を受け、及び技能等に係る業務に従 事する活動(1号) 技能実習計画に基づいて技能等を要する業務に従事する活動(2号、 3号)(非専門的・技術的分野)

転籍・転職

同一の業務区分内又は試験によりその技能水準の共通性が確認されてい る業務区分間において転職可能

原則不可。ただし、実習実施者の倒産等やむを得ない場合や、2号か ら3号への移行時は転籍可能

出典:在留資格「特定技能」について「出入国在留管理庁」

https://www.meti.go.jp/press/2019/08/20190809002/20190809002-1.pdf

 

特定技能のメリットとデメリット

https://unsplash.com/photos/Ll4woVD59t8

「特定技能」と「技能実習」の違いについてはすでに述べましたが、次にそれぞれのメリットとデメリットを見てみましょう。

まずは「特定技能」から解説していきます。

 

メリット

・技能試験があるため、即戦力となる外国人労働者を獲得できる

・日本語能力試験(JLPT)に合格しているので日本語能力がある

・原則正社員雇用のため、フルタイムで就労してもらえる

・「技能実習」から「特定技能」へ移行可能

・労働力不足を補える

 

デメリット

・「特定技能1号」の雇用は最長5年と制限されている

 (2号への移行は業種が限られる)

・せっかく受け入れた外国人労働者が転職する可能性がある

・受け入れ企業側の体制整備が必要

・初期費用が「技能実習」よりもかかる

日本人正社員と同等の待遇にしなければならない

 

「特定技能」では、技能試験や日本語能力試験に合格することが要件とされているため、受け入れ企業は即戦力かつ日本語能力を有する外国人労働者を獲得できるのです。

また、正社員雇用が原則のためフルタイムで雇用できますが、待遇は日本人正社員と同等にする必要があります。

このように、メリットがあればデメリットもあるため、目的に合う制度かを判断した上で活用しましょう。

 

技能実習のメリットとデメリット

https://unsplash.com/photos/OyN4ErsD3J0

 

次に「技能実習」のメリットとデメリットを見てみましょう。

 

メリット

・「特定技能1号」へ移行すれば、最長10年の就労が可能(例外の職種あり)

・転職不可のため長期で安定した就労が期待できる

・技能試験や日本語能力試験がないため、候補者を獲得しやすい

 (介護のみ日本語能力N4が必要)

・最低賃金の範囲内で雇用できる

 

デメリット